読めてよかった順に。
ですます調とである調が混在しているのは、読んですぐにメモを残すのですが、その時の気分によるもの。
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1位 児玉清『すべては今日から』
尊敬する児玉清さんが遺した、本への敬意と愛情と興奮に満ちた文章をまとめたもの。
何度読んでも心地よく、もしも自分が文章を書くなら、こういうものをこういう風に書きたいと思う。
知性と謙虚さを兼ね備えた兒玉さんが、少年のように夢中になった本を熱く熱く語ってくれる。読みたい本が次々に出てきて困ってしまうほど。
最終章は、社会に対しての警告、問題提起。
「もうこの辺りでしっかりと「本の売れない時代』のわれわれ人類に及ぼす悪影響を見極めて『本の盛んに売れる時代』へと転換しなければ、やがて人類は大変な時代を迎えることになることを自覚すべきだと思うのだがどうだろうか」
コロナ禍で、児玉さんのいう悪影響をより感じる昨今、読書の大切さ、そしてシンプルに楽しい!ということを改めて享受できる幸せを思う。
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2位 三好愛『ざらざらをさわる』
繊細な感受性と、キャッチした何かを咀嚼し言葉で表現する技術。
自分になくて、あればいいのになと願う美しい表現が文章という形でそこにありました。
「私も、みんなも、どうしようもなくわかりあえないまま、今日を元気に生きています。」
さらっと読めるのに、ところどころ残る。
彼女の体験は彼女のものなのに、自分の過去の忘れていた記憶が蘇る。
ああ、たしかにあのとき、わたしはそんなふうに感じたな、と。
「呪いの先に」は、増田ミリさんの「どうしても嫌いな人」を思い出しました。どこにでも呪いをかける人はいます。
途中で気になってたまらず、著者の生年月日を調べにいってしまいました。わからなかったけど、たぶん調舒星。戌亥天中殺もあるかも。敏感さを大切に、強みにしている好例だと思いました。
こういうエッセイを、また読みたい。
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3位 いせひでこ『ルリユールおじさん (講談社の創作絵本)』
フランスで著者が出会った、ルリユール。
アパートを借りてまで通い詰め、思いを形にしたこの絵本。
大好きな図鑑がバラバラになってしまい、修復してもらうソフィー。
父親から学んだ技術を高め続けてきたルリユールおじさん。
完成した本を「わたしだけの本」とぎゅっと抱きしめるソフィー、大好きな本の世界にのめり込むソフィーの姿に、なぜか泣きそうな気持ちになった。
ひとにはそれぞれ大事にしたいものがある。それを大切に抱えて生きていきたいな、ということを思い出させてくれる。
いせひでこさんの、優しくて味わい深い絵を眺めているだけでも幸せな気持ちになれる、本好きにはたまらない一冊。
ルリユールって、本当に素敵な職業。
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4位 オーエン・コルファー『アルテミス・ファウル 妖精の身代金 (角川文庫)』
いまいち具体的に想像できなかったところがところどころにありつつも、続きが気になり、ドキドキしながら読み終えた小説。
妖精ホリーの強さと優しさと若気の至りが強く印象に残った。三部作とのことなので、あと二冊楽しめると思うと嬉しい。
海外児童文学、いいな!
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5位 朱川湊人『わくらば日記 「わくらば」シリーズ (角川文庫)』
好き!
本屋大賞の作品でがっかり続きだったので、読んでいる最中も、読後も心地よいこういう作品に出会えてほっとした。
過去が見えてしまう不思議な力を持った姉との思い出を妹が語る。戦後から高度経済成長へと向かうあの頃の日本。
事件簿でもあり、ミステリーでもあり、人間の切なさ愚かさ優しさ温かさも感じられて、読めてよかった。続きもあるので、それを読む楽しみができたのも嬉しい。
私もお母さまに巴投げされたいと思った。
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6位 小野寺史宜ひと』
どんな人にも、その人なりの物語がある。
市井の人の人情話というか、商店街の惣菜屋で働く親を亡くした青年の成長物語。
悪意を持って近づいてくる人、好意のある人、恩人、不遜の自覚がない上からの人。不器用なりに、真摯に生きる人の姿に、共感しつつ教訓を得たり。
主人公と同じくらいの年代に、高校や大学生の頃に読むと、一番響きそう。
親目線で、子どもが読むといいかもねーと思えた、初小野寺作品。
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7位 朱川湊人『わくらば追慕抄 「わくらば」シリーズ (角川文庫)』
わくらば、続編、一気読み。
姉妹の活躍をたくさん読みたいけれど、それは体の弱い姉鈴音の具合を悪くするから悩ましい…と心配してしまうほど、朱川湊人さんが描く昭和の東京にどっぷり浸れて、楽しめた。
過去や真実がはっきりすることばかりがよいわけではない。やむに止まれぬ事情を抱えた、戦後を生きた人々。
それにしても、生き生きと描かれる、お転婆の妹と、慈愛に満ちた姉。脇役の刑事もいい味を出していて、男性の作家の手によるものとは驚く。
朱川さんの他の作品はこれから読もうと思う。楽しみができて嬉しい。
不思議で、少し怖くて、でも優しい、そんなお話を読みたい時に最適。
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8位 オーエン・コルファー『ウィッシュリスト The Wish List』
一級のエンターテインメント小説の評判の通り、と素直に思えた、読めてよかった一冊。
図書館でたまたま手に取った自分を褒めてあげたい。
盗みに忍び込んだアパートで命を落とした14歳の不良少女メグ・フィン。その家に住む死期のちかい偏屈な老人と彼女の霊魂との願いを叶える珍道中。
地獄からの死者の邪魔から逃れ、四つの願いを叶えることはできるのか、フィンは天国へ行けるのか。
いきなり主人公が衝撃的な死を迎え、どうなるのかと不安を憶えながら読み始め、夢中に。ノンストップで楽しめ、結末が気になり仕方がない。読み終えた今、ホッとしている。
「アルテミス・ファウル」を是非読まねば。悪のハリー・ポッターだそう。
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9位 小山田浩子『工場(新潮文庫)』
不穏。
なんてことないストーリーのようで、後からじわじわくるタイプの作品。
ずっと座ってた座布団の下にマムシがいた、あの違和感それだったのかー、みたいな感覚。
不穏という空気を物語にしたら、こうなった、という印象。冒険もの、エッセイ、ファンタジー、ミステリー、様々なジャンルを読む人がその中に挟み込むといいかもしれない。
居酒屋メニューの中の、定番ではなく、得体が知れなくて、ちょっとどうなの?という見た目で、食べても変な感じだけど、翌日あれ美味しかったなあと思い出すような作品。工場ウ、そうきたか。
職場の人たちの、ささやかな、でも大きな、未熟さや悪意をこんな風に描けるのもすごいな、と思った。
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10位 アレックス・シアラー『This is the Life』
優秀だったのに不器用で上手く生きられなかったように感じてた兄のあの世への旅立ちに寄り添った弟である「おれ」が語る、その日までのできごとと、回想。
著者の他の作品のような、ドキドキな展開とは全く異なり、おとなのための、身内の見送り方の実際、という内容でした。
オーストラリアのワイルドな住宅事情も垣間見え、そこは興味深かったです。
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11位 清水麻子『[静岡]本のある場所 (momo book) 』
静岡県内や浜松に、こんなに魅力的な古書店、新刊書店、ブックカフェ、図書館があったなんて。
知ることができて嬉しいし、行ってみる楽しみが増えた。
ただ、2014年の本なので、閉店したり、状況が変わっているお店もありそう。実際、葵タワーの戸田書店は閉店。
大学図書館が一般利用可というのも、そういえば、と気づかせてもらえて嬉しい。掛川や佐久間の図書館、ブックカフェなど、足を運んでみたいと思う。
本と本のある空間を愛するすべての人に。
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12位 朱川湊人『本日、サービスデー (光文社文庫)』
正統派のハートウォーミングな五篇の作品集。
安心して読めて、列車の旅の友に最適。
本日サービスデー、気合入門、蒼い岸辺にて、は主人公と一緒にドキドキしながらがんばろ、と思える。あおぞら怪談のるり子さんは、妖怪アパートのるり子さんを思わせる、切なさの残るお話。
東京しあわせクラブはタイトルと内容のギャップにつっこみたくなる。途中で気づく、あのゾッとする感覚が読み応えとあうものか。
読む前の自分に読むべきか聞かれたら、いくつか並行して読む中で、ちょうどいい気分転換になるからいいと思うよ、と答える。
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13位 益田ミリ『結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日 (幻冬舎文庫)』
老後も不安だけど、今も大事。
今の自分を大事にしていきたいなと思えた。
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14位 益田ミリ『すーちゃん (幻冬舎文庫 ま 10-2)』
あたしはあたしでいい。
揺れながら、悩みながら、時々怒ったり泣いたりしながら、生きていく。
すーちゃんの思考に共感。
絵もいい。
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15位 キャロル・マックラウド『しあわせのバケツ<改訂版>』
幸福に生きるためには自分の欲求を満たすことが必要で、そのためには良い人間関係が必須ということをわかりやすく教えてくれる絵本。
選択理論心理学を学んだ人は、あら、まんま!わかりやすい!と思うはず。
カラーも五種類あるのもさらに選択理論っぽい。
絵本としてより、教材としてよくできでるなという感想。
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16位 益田ミリ『すーちゃんの恋 (幻冬舎文庫)』
「『逃げ出した』なんて言葉にしばられず、そのまま受けとめればいいの。「逃げた』じゃなく「辞めた』それだけのことよ。」栄養士のみどり先生の言葉の優しさが嬉しかった。
カフェを辞めたすーちゃんが働く保育園。
どこでも、自分らしく生きることはできるし、とても大切なこと。
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17位 池田暁子『片づけられない女のための こんどこそ! 片づける技術』
さらっと読めて、役立って、やる気につながる汚部屋脱出実録コミックエッセイ。
イラストがかわいらしいので、ゴミゴミした部屋の描写も痛々しさを感じない。
小さな発見や、これからを幸せに、片づけで悩まず快適に生きていきたい!という気持ちに共感できる。
入門書として優れていると思う。
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18位 赤川次郎『復讐専用ダイヤル―赤川次郎ショートショートシリーズ (赤川次郎ショートショートシリーズ 1)』
赤川次郎さんのショートショート。
読むのに疲れた時に、休憩と気分転換にちょうどいい本。
散歩の後のシャワーみたいな感じかな。お風呂みたいにじっくり浸ることはできないけど、さっぱり、すっきり。
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19位 湊かなえ『カケラ』
こういう複数の視点で書かれたスタイルは好きだけど、このお話自体はあまりピンと来なかった。
主人公というか聞き手の整形外科医の本音が見えてこなかったから。そこは読者の想像に任せているのかな。
あのドーナツは食べてみたい!と思った。
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20位 菅野久美子『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』
事故物件について調べ、体験してきたレポート。最後の、現場検証に立ち会ってきた警察官の方の言葉が印象に残った。
「浄土真宗だったか、人間は生まれたときから死にむかっているというわけではないんですが、みんないつか死ぬわけだから、死に様をどういうふうに迎えるかというだけなんです。私も明日死ぬかわからない。、だから、その日その日を大事に生きるしかない。」p139
孤独な遺体に接した時に、看取ってあげたからねと遺体の顔を拭いてあげる彼の優しさと誇りを感じた。
生きているうちにできることは何か、何をするのか、したいのか、考えさせられた。
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21位 『ジュニアのための バレエ 上達パーフェクトレッスン 新版 (コツがわかる本!)』
バレエを習いたての親子に。
バレエに興味のある老若男女に。
バレエの基礎を独習したい人に。
ちょうどいい入門書だと思いました。
少なくとも、バレエというか、バレリーナの姿勢の美しさや身体を思う通りに、かつ美しくコントロールする術について知りたい自分には、概要をつかみ、その難しさ、奥の深さを知るには最適な一冊でした。
もう少しポーズの名前も覚えて、舞台も観に行きたい。
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22位 深緑野分 『この本を盗む者は』
読了。
しんどかった。五話のうち四話までは、昨日見た支離滅裂な夢の話を聞かされているようで苦痛。イメージしづらくて目が滑った。自分の想像力の不足のせいかもしれない。
読む前の自分に読むべきか尋ねられたとしたら、それを読むなら好きなのを再読を勧める。もしくは、五話だけ読めばいいよと言う。
しみじみ、ゲド戦記や精霊の守り人、マイケル・モーパーゴさんや伊坂幸太郎さん、浅田次郎さんの描写のレベルの高さを感じることができた。
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本が読めるのは幸せなこと。
生きているうちに、読める本は、自分が思っているより多くないんですよね。
時間を大切に、読みたい本を読める有り難さに感謝して、
今月も、読書の時間を増やしたい、楽しみたい、と思います。
♪年間100冊読みたい本仲間♪
↓
香織さん→
『時間が増える仕組み作り SMILE LIFE』
ロリスさん→
『ロリスの『これやった!』日記』
東條→
『本が好きカテゴリー』『死ぬまでに読んでメモしたい100冊の本』『【一覧】片づけに役立つ本』『[一覧]既読捨てる気になる本』
まとめ→
『2021年読めて幸せを感じられた本ベスト10冊』
まとめ→
『2020年読めて幸せを感じられた本ベスト10冊』
読書は愉しい。
私にとって、とてもヒュッゲな時間だから。
読みたい本がある。
本が読める。
分かち合える人がいる。
しみじみその幸せを噛みしめる、浜松のライフオーガナイザー、東條真紀でした。